三重県実業団対抗ゴルフ選手権も今年で5回目を数える。回を重ねる毎に年々出場チームも増加し、今年は50チームが参加。東海決勝大会への切符をかけた戦いは、ここ三重県も例外なく、他県に負けずとも劣らない激戦となっている。
そんな三重県大会に参加している企業の中でも特に高いモチベーションで決勝大会出場を目指しているのが、今回取材させて頂いた「古河AS株式会社(以下、古河AS)」チームだ。前回大会から連続出場となった第5回大会では、A・B・Cの3チームで大会に出場している。今回はその古河ASチームの代表を務める古川選手に、チームでの取り組みや実業団対抗ゴルフ選手権に対する想いを伺った。
取材:宮崎(榊原温泉ゴルフ倶楽部)
古河ASには元々ゴルフ部があった訳ではなく、現在のチームは「社内のゴルフ好きの集まり」からスタートしているという。チームの一員である坂本選手が社内でゴルフ好きの社員に誘いの声をかけていったことから徐々に広がり、人が人を呼ぶ形で少しずつチームとして形成されていったそうだ。現在では大関工場長が中心となって年4回の社内コンペを開催する程、社内ではゴルフが盛んだという。
社内でのゴルフ文化が成熟しつつあった古河ASだったが、ある日、新聞で三重県実業団対抗ゴルフ選手権の存在を知ると、ゴルフをプレーするのに楽しい"だけ"では物足りなくなっていた一同は本大会への出場を決意する。すると今までは社内コンペにしか参加していなかった部下達から“自分達も参加したい”という嬉しい声が多数上がり、今年はA・B・Cと3チーム構成の計12人で大会に臨むこととなった。
以前は「チーム内で何か特別な取り組みをする」ということもなく、みなで練習場へ行く程度だったとのことだが、本大会への出場を決意したことによってチームが一丸となり、チーム内のコミュニケーションはより活発に。以前にも増してお互いの事を知ることができるようになり、非常に良い雰囲気で大会へ挑む事が出来たという。本大会へ出場することで、チームにより強い絆が生まれたのだ。
実業団対抗ゴルフ選手権には昨年も出場していたが、残念ながら昨年は39チーム中24位と悔しい結果に終わっている。昨年の雪辱を果たすべく、古河ASチームの一同の胸には「今年こそは東海決勝大会へ出場する」という大きな目標が掲げられていたこともあり、今年は大会本番に向けて練習ラウンドを何度も重ねていたが、実際の大会はそう甘くはなかったようだ。
チーム内からは「本番当日よりも最初の練習ラウンドの方がスコアがよかった。」「コースを知れば知るほど、狙い所が分かってしまい、攻める事ができなくなってしまう。」というような声も挙がっており、大会に参加した選手でしか味わえない大会の“難しさ”がインタビューをしているこちらにまで伝わってきた。
また、「大会の雰囲気に押し潰されそうになり、最初のティショットはすごく緊張した」という選手の言葉は、大会の緊張感そのものをあらわしているだろう。 例えるならば・・・ゴルフをする人なら一度は感じた事があるであろう、ティショットの際に後ろの組が自分たちのショットを見ている時に感じる緊張感・・・、選手達はあの緊張感の何倍ものプレッシャーを背負いながらプレイし続けなくてはいけないわけで、選手達にとっては「大会本番で普段の実力を発揮すること」自体が、ある意味最も難しいことなのかもしれないのだ。
最終的に今回の第5回大会では263ストロークという成績で惜しくも団体戦18位という結果に終わった。シード権を獲得出来る15位が261ストロークというスコアだっただけに、あと2打というわずかな差が悔やまれる。しかし、本大会ではこのわずか2打が大きな壁となっている、とチームは認識している。この壁を打破できるよう、各個人がスキルアップを目指し、チームでの取り組みも強化していくことを今後の課題としていくとのことだ。
驚いた事に、チームリーダーである古川選手は、大会直前に使い慣れていたクラブを変えて、大会に臨んでいたという。 普段から使い慣れたクラブではなく、わざわざ大会直前にリスクを犯してまで不慣れな新しいクラブに変更したのは、大会直前までドライバーに苦しみ続け、同じクラブを使っている人にも飛距離で負けてしまっていたことが理由だという。そこには思い通りにいかない自分に対しての悔しさや、チームのリーダーとしての責任感もあったのだろう。
日常の仕事が多忙だったこともあり、新しいクラブで練習をする十分な時間も取れず、結果としては万全な状態で大会に挑むことが出来なかったわけだが、「クラブを変える」という決断を語る古川選手の様子は、既に次の大会を見据えているかのようにも感じた。
最後に、リーダーの古川選手が今年の個人目標を、三重県内では最も多い21のゴルフ場がある「中勢地区」のゴルフ場を全て制覇すること、としていることを教えてくれた。数多くある様々なコースを巡ることで得られる経験をチームに還元し、共有するのだそうだ。
前回大会からは確実に順位を伸ばしてきている。今回の課題への対策と悔しさをバネに、来年はシード権争いはもちろん、きっと上位でも戦えるようなチームになっているに違いない。